
人間の尊厳と自立:介護福祉士国家試験では、2問出題されます。
人間の尊厳と自立 出題キーワード
自立支援
尊厳
倫理
権利擁護
アドボカシー
人間の尊厳と自立 出題例
世界人権宣言では、人間の尊厳と権利の平等について明記している(〇)
世界人権宣言第1条
全ての人間は生まれながらにして「自由」であり、かつ、尊厳と権利とについて「平等」である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。
利用者側に立った利用者の権利などの擁護活動を、アドボカシーという。(〇)
アドボカシー
アドボカシーとは、本来「擁護」や「支持」「唱道」などの意味を持つ言葉で、日本では近年、「政策提言」や「権利擁護」などの意味で用いられるようになっている。援助過程において、援助者が利用者の権利を擁護するための活動である。
障害者基本法には、個人の尊厳の尊重とそれにふさわしい生活を保障される権利が規定されている。(〇)
障害者基本法第3条
第一条に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその「尊厳」が重んぜられ、その「尊厳」にふさわしい生活を保障される「権利」を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。
一 全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。
二 全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。
三 全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。
介護福祉士には、介護に関する知識の向上が求められる。(〇)
社会福祉士及び介護福祉士法 第四章社会福祉士及び介護福祉士の義務等
(誠実義務)
第四十四条の二 社会福祉士及び介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立つて、誠実にその業務を行わなければならない。
(信用失墜行為の禁止)
第四十五条 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉士又は介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
(秘密保持義務)
第四十六条 社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。
(連携)
第四十七条 社会福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービス(次項において「福祉サービス等」という。)が総合的かつ適切に提供されるよう、地域に即した創意と工夫を行いつつ、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。
2 介護福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、認知症(介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)第五条の二 に規定する認知症をいう。)であること等の心身の状況その他の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。
(資質向上の責務)
第四十七条の二 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、相談援助又は介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。
日本介護福祉士会「倫理綱領」
1.利用者本位、自立支援
2.専門的サービスの提供
3.プライバシーの保護
4.総合的サービスの提供と積極的な連携、協力
5.利用者ニーズの代弁
6.地域福祉の推進
7.後継者の育成
独学で一発合格する方法
「人間の尊厳と自立」については、極端な話をすると、勉強しなくても良いと考えています。と言うのは、合格基準でもあるように、「人間の尊厳と自立」と「介護の基本」が同じ科目群にあり、どちらの科目も0点だと他で合格点を取れたとしても不合格になってしまいます。
「人間の尊厳と自立」が0点だったとしても、「介護の基本」で点数が取れれば、最低限の合格基準はクリアできるので、「人間の尊厳と自立」は点数が取れなくても、「介護の基本」で出題される10問で点数を稼げば合格ラインを取ることができるのです。
「人間の尊厳と自立」については、
「人間の尊厳と自立」
「介護における尊厳の保持・自立支援」に関する問題が2問出題されます。
出題基準
1:人間の尊厳と自立
1)人間理解と尊厳
→人間の多面的理解・自立自律
2:介護における尊厳の保持・自立支援
1)人権と尊厳
→権利擁護・アドボガシー,人権尊重,身体的・精神的・社会的な自立支援
人間の尊厳と自立
人間の「尊厳」とは、個人の生き方の尊重であり、「自立」とは、その人自身の個性を大切にして、与えられた個人的・環境的条件のもとで生活設計をしていく道筋である。人間の尊厳は、人間の自立を内包しているととらえることができる。
人間の尊厳
人間が個人として尊重されること。
自立
心身の障害等によって生活支障が生じている人々が日常生活をセルフケアによって営む「生活の自立」だけでなく、心理的に他者への依存から脱却し、自ら意思決定(自己決定)し、可能な限り、社会における何らかの役割をもち、活動することである。
自律
自立の前提となるもので、自分で立てた規範に従って、自分のことは自分でやっていくという精神的自律が求められる。
自己決定
個別援助の原則の1つであり、利用者が自らの意思で自らの方向を決定すること。
自立生活運動(IL運動)
1960年代後半から1970年代初頭にかけてアメリカで始まった。
重度の障害者であっても、必要な援助を受けながら、自分の意志と責任で自分の生活を設計し、管理していくべきであるという理念に基づいている。
ノーマライゼーション
障害のある人たちを一人の市民として、地域で普通に生活できるように社会のしくみを変えていくこと。
バンク・ミケルセン
デンマークで、知的障害の親の会の運動に関わる中で、世界で初めてノーマライゼーションの原理が入った1959年法の制定に関わった。
ニィリエ,B
スウェーデンのニィリエは、バンク・ミケルセンの考えの影響を受けながら、ノーマライゼーションの8つの原理をまとめた。
【参考】ノーマライゼーションの八つの原則(ニィリエによる)
1 一日のノーマルなリズム
2 一週間のノーマルなリズム
3 一年間のノーマルなリズム
4 ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験
5 ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
6 その文化におけるノーマルな性的関係
7 その社会におけるノーマルな経済水準とそれをえる権利
8 その地域におけるノーマルな環境形態と水準
リハビリテーション
単に機能回復訓練のことを言うのではなく、障害のために人間的生活条件から疎外されている者の全人間的復権を目指す技術および社会的、政策的対応の総合体系。
身体的、精神的かつまた社会的に最も適した機能水準の達成を可能とすることによって、各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供していくことをめざし、かつ、時間を限定したプロセスである。
人権運動の歴史
アメリカ独立宣言 1776年
「すべての人間は平等に造られている」「生命、自由、幸福の追求の権利」などが掲げられ、その後のヨーロッパの市民革命に大きな影響を与えた。
フランス人権宣言 1789年
フランス革命の際に国民議会で採択した「人間と市民の権利宣言」のこと。
第1条では、「人は生まれながらにして自由かつ平等の権利を有する」とうたっている。
ワイマール憲法 1919年
世界で最初に生存権の保障を掲げた憲法。
世界人権宣言 1948年
「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」を宣言したもの。
ワイマール憲法 1919年
世界で最初に生存権の保障を掲げた憲法。
世界人権宣言 1948年
「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」を宣言したもの。
児童憲章 1951年
「児童は、人として尊ばれる」「児童は、社会の一員として重んぜられる」「児童は、良い環境の中で育てられる」
児童権利宣言 1959年
「児童の最善の利益について、最高の配慮が払われなければならない」
知的障害者の権利宣言 1971年
「知的障害者は、実際上可能な限りにおいて、他の人間と同等の権利を有する」
障害者の権利宣言 1975年
「障害者は、その障害の原因、特質及び程度にかかわらず、同年齢の市民と同等の基本的権利を有する」
自立生活運動(IL運動) 1970年代
重度の障害者であっても、必要な援助を受けながら、自分の意思と責任で自分の生活を設計し、管理していくべきであるという理念に基づいている。
国際障害者年 1981年
国連総会にて決議。障害者の完全参加と平等をテーマとし、障害者が社会生活に完全参加し、障害のない人と同等の生活を享受する権利の実現をめざす。
児童の権利に関する条約 1989年
児童は「保護の対象」ではなく、「権利の主体」
障害をもつアメリカ人法(ADA法) 1990年
障害をもつ人の社会参加を保障し、公共施設や商業施設、交通機関を、どんな障害のある人でも利用できるように整備すること、雇用や教育の差別の禁止等を義務付けている。
障害者の権利に関する条約 2006年
障害者の個人の自律および自立、差別されないことなどを一般原則として規定し、障害者に保障されるべき人権・基本的自由を確保・推進するための措置を締約国がとることなどを定めている。(2013年現在、日本は批准していない)
日本国憲法と基本的人権
人権は、すべての者に共通に存在する普遍性があり、人間であるがゆえに当然に有するものである。人権を持っている者としては、自然人がまず考えられるが、日本国憲法の人権規定は、制限的ながらも法人や外国人にもその主体となることが保障されている。
日本国憲法 第25条
1 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
2 「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定している。
日本国憲法 第11条
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。
日本国憲法 第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
日本国憲法 第14条
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。
権利の主体と行為能力
民法では、人の権利能力は「出生時」に取得し、「死亡」することで失う。その間に人はさまざまな法律行為を行いますが、判断能力が不十分な人を保護する規定がある。
行為能力
一人で確定的に、有効な法律行為ができる能力。
行為能力者
年齢20歳以上(成年者)
(未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなす)
制限行為能力者
未成年者 成年被後見人・被保佐人・被補助人
取消権:制限行為能力者がした法律行為は、取消すことができる。
代理
ある行為について、本人に代わって一定の者がその行為を行うこと。
法定代理人:親権者、未成年後見人、成年後見人など。
成年後見制度
成年後見制度
成年後見制度は、精神上の障害により判断能力が不十分であるために、法律行為の意思決定が困難な人を後見人などが保護する制度。
申し立ては、家庭裁判所に対して行う。
家庭裁判所は、職権で法定後見人や法定後見監督人を選任する。
後見:判断能力が欠けているのが常況の者
補佐:判断能力が著しく不十分な者
補助:判断能力が不十分な者
申立人:本人、配偶者、4親等以内の親族、検察官、市町村長など
後見人等になれる人:配偶者や親族のほか、「弁護士などの専門職」や「社会福祉法人などの法人」も選任できる。
日常生活自立支援事業
実施主体
都道府県または指定都市社会福祉協議会
現場の仕事
市町村社会福祉協議会の「専門員」が支援計画を作成する。
市町村社会福祉協議会の「生活支援員」がサービス提供する。
利用対象者
認知症高齢者・知的障害者・精神障害者などで、判断能力が不十分な人。(契約内容が理解できる能力が必要)入院・入所した場合でも、利用することができる。
サービス内容
1 福祉サービスの利用援助
2 苦情解決制度の利用援助
3 行政手続などに関する援助
4 日常的金銭管理 など
日常生活自立支援事業の適正な運営の確保と福祉サービスの利用者などからの苦情の解決のために、都道府県社会福祉協議会に「運営適正化委員会」を置かなければならない。
日常生活自立支援事業の利用希望者の判断能力および契約締結能力に疑義がある場合は、「契約締結審査会」が審査する。(都道府県・指定都市社会福祉協議会に設置)
介護における尊厳の保持・自立支援
社会福祉法第3条は、2000(平成12)年の改正で、福祉サービスの基本的理念として、福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、又はその有する能力に応じた日常生活を営むことができるように支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならない」と規定された。
介護保険法第1条の目的では、2005(平成17)年の改正で、要介護状態となった高齢者等の尊厳の保持が理念として規定された。
介護福祉士には、
1 専門職としての人権意識をもつ
2 利用者が人としての権利を有することに変わりはないことを心に刻む
3 利用者の権利を問い続ける といった姿勢が求められる。
介護福祉士は、利用者の自己の判断と自己決定を最大限に尊重することを前提に、利用者の自己決定の過程において、介護福祉士として利用者の幸福のために何ができるのかを考えながら支援することが大切である。
利用者の権利擁護のためには、介護福祉士は、利用者主体の支援姿勢を徹底的に貫く視点が重要である。
アドボカシー
利用者の利益を図り生活の質を高めるために、権利の代弁、擁護をしていく活動。
エンパワメント
利用者自身が本来持っている力を取り戻し、自分自身の力で問題や課題を解決できる能力を獲得すること。
自己覚知
援助者自身のものの見方や考え方について、自ら理解すること。
ラポール
援助者と利用者との間に成立する共感を伴った信頼関係。
ワーカビリティ
援助者を活用して問題解決に向かう利用者の能力や意欲。
利用者の尊厳を保持し、自立支援を行うために介護福祉士に求められるものとして、
1 誠実義務
2 信用失墜行為
3 秘密保持義務
4 福祉サービス関係者等との連携、
5 資質向上の責務 などが「社会福祉士及び介護福祉士法」に定められている。
終わりに
「人間の尊厳と自立」は、捨てる!これで良いのです。毎年の受験者の声で、試験問題を開いて第1問目を見た途端に、頭が真っ白になったという感想をよく聞きます。
介護福祉士の国家試験の科目:「人間の尊厳と自立」からは2問しか出題されませんので、さほど気にすることはない科目かと思います。法律の条文を覚えたりする必要はなく、大まかな感覚で理解しておけば良いのです。
最初の部分でも書きましたが、キーワード「自立支援、尊厳、倫理、権利擁護、アドボカシー」に留意しておけば大丈夫でしょう。
過去問でも見たことがない問題が突然目の前に現れたら、アタフタしてしまいますよね。一発で合格する方法でも述べましたが、この科目は捨て科目位に考えて、あまりに勉強して時間を取られてしまう科目でもありません。
他の科目、「人間の尊厳と自立」については同じ科目群の「介護の基本」の科目の勉強に注力することで、点数を稼ぐことにしましょう。