

高齢者に多くみられる疾患
神経内科
脳血管障害
動脈硬化性血管障害による、脳内出血、脳血栓。
心臓由来の血栓が脳に飛んで詰まる、脳塞栓。
脳動脈瘤の破裂による、くも膜下出血。
脳内出血、脳血栓の原因
・脳の動脈硬化によって生じる
・脳の動脈硬化の危険因子=高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満
・脳塞栓は、動脈硬化に加えて加齢が大きな危険因子となる。
脳塞栓の原因
・心臓に作られた血栓が脳に飛ぶことが最も多い原因
・心臓に形成された血栓が、深部お細動によって壁からはがれて
脳塞栓を生じる。
くも膜下出血の原因
・脳動脈の壁が薄く弱くなって、その部分が膨らんで瘤を作り
これが破れて脳の表面とそれを覆うくも膜の間に血液が拡がる疾患。
・動脈瘤の原因は不明。
・高齢になると増加する。
・昼間、活動時に多く発症する。
脳内出血の症状
運動麻痺、感覚障害、運動失調、呼吸中枢障害、
言語・記憶・認知・判断などの高次脳機能障害など。
脳血栓の症状
安静時に血圧が低下した時に生じやすい。
朝目覚めた時に発症に気づく。
小脳を冒すと、運動失調
脳幹を冒すと、外眼筋麻痺による複視、言語障害、嚥下障害
大脳皮質や皮質下の白質を冒すと、失語、失認、失行、半側空間無視
脳塞栓の症状
数分以内に症状が完成する。
脳の局所症状に加えて、脳圧亢進症状が出現し、回復も困難。
くも膜下出血の症状
突発性の激しい頭痛が特徴。
嘔気、嘔吐を伴う。
患者の半数で、意識障害を伴う。
脳の局所症状は、目立たない。
パーキンソン病
パーキンソン病は、脳の黒質の神経細胞が変性、消失することにより生じる。
パーキンソン病の4大症状
1 身体の震え(振戦)
2 筋の硬さ(固縮)
3 動作の遅さ、拙劣(無動)
4 姿勢・歩行障害
パーキンソン病の特徴
50~60歳代で発症し、徐々に進行する。
10~20年の経過で自立困難となる。
治療は、薬物療法が基本。
初発症状の60~70%は、振戦である。
安静時振戦が特徴で、動作をすると震えが止まる。
初老期に安静時振戦が一側に発現した場合は、80%以上がパーキンソン病。
平衡感覚が侵されるため、つまずき、転倒しやすくなる。
パーキンソン病の治療
ドーパミン神経伝達を改善させる種々の薬物を用いる。
最も有効なのは、L-ドーパ。
パーキンソン病は、「特定疾患治療研究事業」の対象疾患である。
重症度が、Hoehn&YahnのステージⅢ以上、かつ、
生活機能症度がⅡ、Ⅲ度でないと、認定の対象とならない。
パーキンソン病は、介護保険法のて「特定疾病」である。
進行性核上性麻痺および大脳皮質基底核変性症とともに、
パーキンソン病関連疾患として、「特定疾病」でもある。
てんかん
てんかんとは?
大脳に異常な電気的興奮が生じ、意識を消失して、
全身または身体の一部がけいれんする発作が数十秒から1分続いて起こる。
高齢者のてんかんの原因は、主に脳血管障害か頭部外傷の後遺症である。
てんかんの治療
抗てんかん薬を用いる。
高齢者では、腎機能障害により薬の血中濃度が上昇して副作用を生じやすい。
硬膜下血腫
硬膜下血腫とは?
頭部外傷後に、頭蓋骨の下で大脳を覆う硬膜と脳の表面のくも膜との間に徐々に血液が溜まって脳を圧迫し、意識障害や頭痛などを生じる。
硬膜下血腫の病因
頭部外傷の後遺症で、小さな静脈からの出血により徐々に脳を圧迫して、受傷後約1か月で症状が現れる慢性硬膜下血腫が重要。
高齢者では、転倒による頭部打撲によることが多い。
外傷歴が明らかでない場合もある。
男性に多い。
硬膜下血腫の症状
頭蓋内圧亢進症状(頭痛、意識障害など)、歩行不安定、片側の運動麻痺。
記憶や判断力の低下など認知機能障害。
硬膜下血腫の治療
手術による血腫を除去する。
診断が遅れて認知機能障害が進めば、その完全な回復は難しい。
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは?
言語、記憶、認知、判断、行動、情緒、人格など、大脳が司る高次の神経・精神機能。
80歳を過ぎると、特別の病気がなくても高次脳機能は衰える。
大脳の一部を障害する病気では、失語、失行、失認など、特殊な高次脳機能障害が現れる。
高次脳機能障害の症候・診断
次の症状が認知症を伴わないで目立つ場合は、大脳の局所の障害が疑われる。
1 失語
2 失行
3 失認
4 見当識障害
5 地誌的障害
6 半側空間無視
高次脳機能障害の治療
原因疾患の治療をまず行う。
個々の高次脳機能については、定められた方法で訓練を行う。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは?
徐々に全身の骨格筋が委縮して、四肢の筋力低下による、運土や歩行などの生活機能低下、嚥下障害、言語障害などを生じる。
症状は進行性で、数年で四肢麻痺、摂食障害、呼吸困難により自立が困難になる。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因は、不明。
症状はけいれん。
5~10%の症例は、家族性で遺伝子異常が明らかな場合もある。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状
筋委縮と筋が自然にピクピク動く線維束性収縮、筋力低下を生じる。
障害は、いずれ全身に拡がる。
球麻痺が特徴。
眼球運動や肛門括約筋、知能や意識は、末期までよく保たれる。
シャイ・ドレガー症候群
シャイ・ドレガー症候群は、成人に発症し、起立性低血圧、排尿障害などの自律神経障害が初期から目だち、これに小脳症状やパーキンソン病様症状が加わり、徐々に進行し、数年で自立困難となる。
男性より女性が多い。
治療は、自律神経症状に対して、症状に応じた各種の薬物療法を行う。
睡眠時に舌根沈下による激しいいびきや無呼吸を生じ、まれに急死の原因となることがある。
ピック病
ピック病とは?
アルツハイマー病と対比される。
認知症を主症状とする大脳皮質の変性疾患。
初老期認知症の一型で、40~60歳代で発症する。
介護保険における「特定疾病」。
ピック病の原因は不明
ピック病の症状は、アルツハイマー病と同様に認知症が進行するが、
ピック病では、人格障害が目立つ。
(反社会的な衝動的行動、なげやりな態度、人を馬鹿にした態度など)
ピック病は特徴的な症状を呈する認知症があり、
側脳質の著しい拡大を伴う前頭・側頭葉委縮があれば確実。
クロイスフェルト・ヤコブ病(CID)
クロイスフェルト・ヤコブ病(CID)とは?
異常なプリオン蛋白が脳に蓄積して神経細胞が変性し、認知症、けいれん、意識障害が急速に進行して、1~2年の経過で死亡する。
50~70歳代に発病する稀な病気。
脳は破壊されて海綿状態を呈し、神経細胞も変性し消失する。
病気を治癒させる有効な治療法はない。
「特定疾患治療研究事業」の対象疾患。
脊髄小脳変性症
脊髄小脳変性症とは?
運動失調を主症状とする原因不明の神経変性疾患。
「特定疾患治療研究事業」の対象疾患であり、介護保険法の「特定疾病」。
脊髄小脳変性症の病状
言葉のろれつが回らない、上肢運動が拙劣になる。
失行性歩行が特徴。
治療は、運動療法が主体。
多発性硬化症
多発性硬化症とは?
脳や脊髄を侵す脱髄疾患であり、空間的、時間的な多様性で特徴づけられる。
多彩な症状が出没する。
「特定疾患治療研究事業」の対象疾患。
多発性硬化症の病因
自己免疫による脱髄が原因と考えられる。
発病や再発を誘因として、感染症、過労、ストレス、出産などがある。
女性に多い。
多発性硬化症の症状
わが国では、視神経と脊髄が侵される型が多く、視力低下、四肢の運動麻痺、歩行障害、排尿障害、感覚障害を呈する。
重症筋無力症
重症筋無力症とは?
骨格筋を繰り返し使うと、急速に筋力が低下する疾患。
朝は症状が軽く、夕方に症状が憎悪する日内変動を認める。
重症筋無力症の病因
神経筋伝達が阻害される結果、骨格筋が収縮できず、筋力が低下する。
自己免疫疾患の一種。
重症筋無力症の症状
眼球運動障害による複視、眼瞼下垂、嚥下障害、鼻声、言語障害、四肢筋力低下、呼吸困難など。
感覚障害はなく、知能は正常。
ハンチントン病
ハンチントン病とは?
優性遺伝を示す神経変性疾患で、成人に発症する。
舞踏病運動と認知症が進行し、10~20年で死亡する。
「特定疾患治療研究事業」の対象疾患。
舞踏病運動が初発することが多い。
(手足は頸、顔面筋が不規則に不随意に奇妙な動きを呈する)
多くの場合、親子が発症するという家族歴がある。
数か月から1~2年経って、認知症や性格変化などの精神症状が現れる。
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群とは?
感冒や胃腸症状に続いて、1~2週間後に急速に運動麻痺が出現する運動神経炎。
放置すると、呼吸筋麻痺で死亡する
原因は、ウイルスや細菌感染により産出された抗体が運動神経や神経根の脱髄を生ずることによると考えられる。
四肢の筋力低下が急激に出現し、進行する。
障害は、球麻痺。
発病後4週間程度で症状はピークに達し、その後数週間は症状がこていして、のちに次第に軽快する。
本態性震戦
動作時に手が震えるのみ。
ほかに症状がなく、10年以上経過する。
重篤な臓器障害を伴わない。
本態性震戦の病因
骨格筋に存在するβ-アドレナリン受容体の活動が亢進しているため、
正常人でも緊張や興奮に際して出現する生理的振戦が、
過剰に表れたもの
本態性震戦の症状
動作時や一定の姿勢保持に際して、
手指に目立った震えが出現して目的動作を妨げる。
(特に目立つのは、書字に際しての震え)
約6割の患者は、飲酒により震えが消失する。
本態性震戦の治療
β受容体遮断薬が有効。
わが国では、アロチノロールのみ保険適用がある。
β受容体遮断薬では副作用として徐脈(50回/分)に注意する。
神経内科/高齢者に多くみられる疾患 過去問まとめ
この一発合格ノートは、私が勉強した時のものを要約したものを掲載しています。2008年の10月のケアマネ試験に一発合格するために作ったものです。従って、法改正などで内容が変更になっている部分もあると思いますので、各自の責任で参考にしてみてください。
● 脳血管障害は動脈硬化が背景にあり、危険因子としては、
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙、ストレスなどがある。
● 脳血管障害には、早期リハビリテーションが大切で、
再発にも注意が必要。
● 脳卒中の再発率は、比較的高い。
● 脳血栓の症状は、数時間から1日、2日かかって完成する。
● 心房細動によって血栓が生じ、脳塞栓を起こすことがある。
● くも膜下出血は、脳の表面を覆うくも膜と脳表面の間にある動脈瘤が破裂し、
くも膜下口に血液が流入することにより生じる(脳の外で起こる)。
● 脳血管疾患における第一の危険因子は、高血圧症である。
● 脳出血では、頭蓋内圧亢進症状や高次脳機能障害がみられる。
● 脳血栓は、脳内で分岐する動脈にアテローム血栓ができて、
その動脈の支配領域に虚血性の壊死病変が生じることをいう。
● 脳血栓は、低血圧時に生じやすい。
● 脳血栓の症状は、数時間から1~2日かかって完成する。
● 他所でできた血のかたまりが脳で血管を塞ぐのが脳塞栓であり、
心原性塞栓が最も多い。
● くも膜下出血は高血圧と関係があり、
血圧が高まる昼間の活動時に多く発症する。
● 脳血管疾患の後遺症の予防には、早期リハビリテーションが大切である。
● 再発防止のために、血圧管理等を行う。
● 脳卒中後遺症者は、咀嚼や嚥下の機能に障害が残ることがある。
● パーキンソン病は、脳の黒質の神経細胞が変性、消失することにより生じる。
● パーキンソン病の治療の一つとして、脳手術がある。
● パーキンソン病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症は、
「パーキンソン病関連疾患」として、介護保険法の特定疾病である。
● パーキンソン病は進行すると、うつ状態や認知症などの
精神症状や自律神経症状が出現する。
● 高齢者のてんかんの原因は、主に脳血管障害か頭部外傷の後遺症である。
● てんかん発作は、数分で収まることが多い。
● 頭蓋外傷は、硬膜下血腫の原因となる。
● 慢性硬膜下血腫は、頭部打撲によることが多いとされているが、
転倒などの頭部打撲の既往歴が明らかでない場合も少なくない。
● 硬膜下血腫を早期に発見し、血腫を除去すれば、後遺症なしに治癒する。
● 脳血管障害などで大脳を障害すると、高次脳機能障害を生じる
● 高次脳機能障害は、脳血管などで大脳が障害され、
失語、失行、失認などが現れる。
● 筋委縮性側索硬化症では、知能に障害を伴うことは少ない。
● 筋萎縮性側索硬化症の初期症状は、身体のどの部位に目立つかにより異なる。
最も多いのは、手先からの症状である。
● シャイ・ドレガー症候群では、パーキンソン病様症状がみられる。
● 睡眠時の舌根沈下による激しいいびきや無呼吸、まれに急死の原因となる。
● ピック病の場合、人格障害など管理が難しい認知症症状を呈する。
● ピック病は、前頭葉と側頭葉が集中的に委縮し、
人格変化や異常な言動が目立つ。
● 本態性振戦には、有効な治療薬がある。
● 文字を書く際に目立ち、緊張時に増強する。